社員の働きがいやエンゲージメントを高める施策として、多くの企業が改めて注目しているのが「社内表彰制度」です。
従業員の努力を“見える化”し、仲間からの称賛を得る場をつくることは、離職防止、エンゲージメント向上、さらには企業文化の醸成にもつながる重要な取り組みです。
GMOインターネットグループでは、グループ全体(約7,800人)の中から活躍したパートナーを称える「GMOアワード」を2008年から実施しています。
GMOインターネットグループでは従業員のこと「パートナー」と呼んでいます。
現在は、リアルとオンラインを掛け合わせたハイブリッド形式に進化し、今年は「社員の表情と想いがきちんと伝わる表彰式」をテーマに、GMOグローバルスタジオを活用して全世界とつながるイベントを実現しました。
本記事では、その表彰式の裏側にある「演出設計」を可能な限り公開します。
ポイント①:オンライン配信でも感情を届けるハイブリッド表彰式の演出設計
GMOアワードの会場となるのは、東京・世田谷区の「GMOグローバルスタジオ」。
ここには役員およびノミネート者約180名が集まり、それ以外の約7,600人のパートナーが、YouTube Live配信を通じてオンラインで視聴します。
つまり、リアル会場の参加者とは別に約7,600人の視聴者がいるのです。
配信がメインのイベントでは、「いかに見応えのあるコンテンツにするか」が重要です。
GMOグローバルスタジオでは、以下のような方法で配信に“温度”を込めました。

オンライン視聴では“熱量”や“感情”が伝わりづらい——
これは多くの配信型イベントが抱える課題です。
そこでGMOグローバルスタジオでは、以下のような方法で、このイベントの「熱量」を配信に込めました。
表情重視のカメラ構成
スタジオ常設のクレーンカメラを含め7台のカメラをフル活用。
受賞者発表を待つパートナーの緊張した表情、発表された瞬間の受賞者の表情、そして、感謝の思いを伝える瞬間…。
人の心が動く瞬間は、どんな演技よりも自然かつ、思いもよらないドラマを生み出します。
その時を逃せば二度と見ることのできない「表情」を伝えたいと考えました。
スタッフ一丸となり、受賞者・ノミネート者の感情が動く瞬間にこだわったカメラワークを心がけました。

リアルタイムならではの“ドラマ”を切り取ることで、視聴者の没入感を高めています。
Zoomでつなぐ拠点紹介
GMOインターネットグループは、国内外に多数の拠点があります。
しかし、多くのパートナーがその拠点のほとんどに足を運ぶことはありません。海外となると尚更です。
そこで、表彰式では幕間コンテンツとして国内外の各拠点とZoomをつなぎ、スタジオ内にARで表示した地図を通して中継を実施しました。
地理的な広がりと“仲間の存在”を演出して、リアル会場にとどまらない連帯感をつくりました。

世界中に仲間がいることを“映像体験”として可視化し、地理的な広がりと一体感を演出しました。
LED・AR合成による演出
GMOグローバルスタジオ最大の魅力であるXRを活用したバーチャル空間はこのアワードでも活用。
バーチャルセットを通して授賞式の特別感を演出しました。

配信視聴者にも“特別な場”としての印象を与え、記憶に残る映像体験を届けました。
ポイント②:リアルタイム投票で視聴者を巻き込む“参加型”表彰式の仕組み
ただ映像を見せるだけでは、オンライン視聴者は受け身になりがちです。
そこでGMOアワードでは、できる限り“参加者全員が主役”になる設計になるよう工夫を図っています。
そこで去年から導入したのが、リアルタイム投票システムです。
今年は2つの部門で、受賞候補者を紹介した後に「全パートナーによる投票」を実施し、その場で結果を発表しています。

パートナーはスマートフォンやPCで投票。
投票状況はリアルタイムに集計され、カウントダウンが終わった瞬間に1位が決まるというライブ感に満ちた構成でした。
視聴者は“傍観者”から“関与者”に変わり、イベントへの没入度が大きく高めることができます。
システムの精度や演出方法など課題も沢山ありますが、今後も視聴者を置き去りにしない表彰式にできるよう、さらなる向上を図っていきたいと考えています。
ポイント③:「功績を称える文化」を育てる社内イベント設計の工夫
GMOアワード2025では、「パートナーの頑張りが自然に称えられる空気づくり」を意識して演出を行いました。
一方的な表彰式ではなく、パートナー一人ひとりが自分事としてアワードを受け止め、組織文化として定着させるための重要な視点です。
受賞者の情報を配信画面に盛り込む
受賞者発表の際に表示される画面には、受賞理由を短くまとめて表示しました。
限られた時間の中でも、「なぜこの人が表彰されるのか」が一目でわかるよう設計されています。

これにより、グループ内でも普段接点のない部署や国のパートナー同士が、「そういう仕事をしていたのか」と理解し、互いの存在価値を実感できる構成になりました。
受賞者に「話す場」を設け、“想い”を可視化
GMOアワードでは、約90分の受賞式の中で合わせて33人を表彰します。
その他にもプレゼンターからコメントを貰ったり、表彰式以外のコンテンツもあったりと盛り沢山なプログラムの中で、受賞者が発言できる機会はかなり限定的になってしまいます。
それでも授賞式では、すべての受賞者からひと言ずつ感想を頂き、短いながらも“自分の声で語る時間”をしっかりと設けました。
これまでの取り組みを振り返り感極まる人や、驚いている様子の人など、受賞者の「生の声」を届けることで、より受賞者を身近に感じることができます。
プレゼンターを“関係者”中心にアサイン
トロフィーを手渡すプレゼンターの人選もポイントの一つです。
同じ会社の役員やその賞に関連する領域の役員が登壇することで、「知っている人が直接称える」構図が成立し、会場全体に温かい雰囲気が広がります。
これはリモート視聴者にも伝わる大きな要素のひとつです。
視聴パートナーからの声:「見応え」と「一体感」が生むモチベーション
約7,800人が参加したGMOアワード2025では、多くのパートナーから感想が寄せられました。
リアルとオンラインを融合させた“つながる表彰式”の取り組みは、視聴者にも確実に届いています。
以下は、実際に寄せられた声の一部です。
全体的なビジュアルも、民放の番組に劣らないレベルのクオリティになってきていると思います。
海外拠点との中継の際、たくさんの国にパートナーがいてくれること、グローバル展開が順調に進んでいることを改めて実感しました!
全体を通じてとても素晴らしくオーガナイズ、演出、進行されていて、観ていてとてもワクワクしつつモチベーションが上がりました!
このように、GMOアワードは“視聴型”ではなく、“参加体験型”のイベントとして、オンライン視聴者にも確かな感動と意義を届けています。
「顔が見えるアワード」で組織文化を育てる
GMOインターネットグループにとってGMOアワードは、単なる社内表彰ではなく、「世界中の仲間とつながり、互いを尊敬し合える環境を作り出すハイブリッドイベント」となっています。
そのイベントを実現させるためには、イベント会場だけではなく、配信にも最高のクオリティが求められます。
- 配信でも表情と感情を届ける映像表現
- パートナー参加型のリアルタイム投票
- 受賞者をより理解してもらえるテロップ表示
これらの要素はすべて、「全7,800人のパートナーをつなげる配信」を設計するための手段です。

社内アワードを導入しようとしている企業、あるいはすでに実施しているが課題を感じている担当者にとって、GMOアワードの事例を“再現性のある設計のヒント”にしてみてはいかがでしょうか。
第2回では、この90分をどのように台本に落とし込み、300件を超えるテロップをどのように生成AIで効率化したかをご紹介します。